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僕は夢を見ていた。
僕は近所の公園にいた。
手にはあの玉手箱を持っていた。
僕はあたりをうかがい、公園に入って行った。公園には人がいなかった。
僕は玉手箱を手にベンチに座った。どうやら季節は春らしく、あたりには新たな生命の誕生を感じることが出来た。
僕は立ち上がると玉手箱をベンチの上に置いた。
そしてゆっくりと公園を出て近くの住宅の裏から、公園のベンチの上にある玉手箱を見ていた。
やがて人がやって来た。
それは吉弓さんだった。
吉弓さんが小さな少年を連れてやって来たのだ。
吉弓さんは落ち着いた色の花柄のワンピースを着て、手には小さなハンドバッグを持っていた。
吉弓さんたちは公園へと入った。
吉弓さんは膨らみつつある桜の花のつぼみを見上げていた。
一緒に来た少年は公園に設置されている鉄棒で逆上がりをしたり、ブランコに乗ったりしていた。
吉弓さんもブランコに腰掛ていた。
しばらくはそうやって少年は遊んでいた。だが、少しすると少年はベンチの上の玉手箱に気づいたようだった。
そのときには僕はあることに気がついた。
あの子は僕だ……、あの少年は小さい僕だ、と。
なぜだ、なぜ小さい僕が吉弓さんと一緒にいるんだ! と僕は心の中で叫んだ。
少年はベンチの上の玉手箱に興味を持ったのか、それに近づいていった。
僕は立ち上がった。
そこに行ってはいけない! と叫んだ。
だが、僕は言葉を発することが出来なかった。僕が発した言葉は音を持っていなかった。
少年はなおも玉手箱に近づいて行った。
僕は急いで公園へと向かおうと思った。
手足を動かし、垣根を越えて公園へ向かおうと思った。
でもだめだった。
僕の体は見えない壁に阻まれて前にも後ろにも進めなくなっていたのだ。僕の体は鏡の中にとらわれてどうすることも出来なくなっていたのだ。
僕はその鏡の中から音の無い叫びを続けていた。
少年は玉手箱に向かって走り続けていた。
彼が玉手箱を開けるのは時間の問題だった。
吉弓さんが少年の視線の先に玉手箱があることに気がついた。吉弓さんはブランコから立ち上がった。
先ほどまでは落ち着いた穏やかな表情をしていたのに今は硬い緊張感のある表情をしていた。
吉弓さんはおもむろに自分のハンドバッグを開けるとそこから何かを取り出した。
吉弓さんはハンドバッグを地面に放り投げた。
手には拳銃を持っていた。
吉弓さんはハンドバッグから拳銃を取り出したのだ。
その拳銃は春の太陽の光に照らされてピカピカと光っていた。
吉弓さんはその拳銃を右手でしっかりと持ち、肩幅くらいに足を開いて立った。
それから、ゆっくりと右手を持ち上げ、拳銃を持つ右拳に左手を添えた。
そして、左眼をつぶり、真剣な眼差しで照準を合わせた。
それから吉弓さんは引き金を引いた。
どうやら吉弓さんは三回引き金を引いたようだった。
三発の銃声があたりに鳴り響いた。
鋭い閃光が銃口から発せられた。
三つの弾は白い光の残像を残して玉手箱へと向かって飛んでいった。
少年の背後から弾は流線型の軌跡を描いて玉手箱へと飛んでいった。
そして、まるで玉手箱が親の敵でもあるかのようにそれを粉々にしていった。
少年は驚いて吉弓さんの方へと振り向いた。
吉弓さんはゆっくりと腕を下ろした。
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