ノーベンバーレイン{立読みサイト}

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 僕は彼女がクラヴで出会った誰かかな? と考えた。声には覚えがないが、爆音でうるさいクラヴでは声の感じも変わるだろう。もしかしたら例によって僕は酔っぱらっていて、彼女に声をかけたのを覚えていないだけなのかもしれない。だから会ってみれば全てはわかるような気がした。確かに怪しげな物を売る営業めいた電話ではなさそうだ。僕はしばらく考えた後、こう言った。
「会うとしたらどこでだい? 君は僕の住所を知っているのか?」
「銀座の〈S〉の前で会いましょう。そこから近いでしょ。あなたの家の住所なんて知らないわ。電話番号から大体の予想ができるだけよ」
 銀座の〈S〉──確かにすぐに行ける場所ではある。
「ふむ、なるほど。でも、今日は異常に暑い。人混みには出たくない」
「私は十七なのよ」
「何?」
「十七歳なの」
「ああ、そう。それが何か?」
「だから、十七のイケテル女の子が誘っているのよ。ちょっとくらい暑くても出てきてよ」
 十七歳の知り合い?
 すぐには思いつかなかった。
「自分でイケテルとかって言うか?」
「もう、とにかく一時間後に来てよね。絶対よ、わかった? もし来てくれなかったら本当に死んでやるから。死んだ理由はこの家に住む男の人に騙されたからって、あなたの家の電話番号を書いた遺書を残すんだから、いいわね」
 そう彼女はまくしたてて電話を切った。受話器の向こうでツーツーという無気力な音がしていた。僕はしばらく受話器を手に持ったまま立っていた。それから、それを電話機の上に下ろした。

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