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ノーベンバーレイン{立読みサイト}
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「じゃあ、一緒に来たんじゃないんだ」
「ええ。彼は明後日帰ってしまいます。僕は帰らないけど」
僕はそう言ってから田部を見た。田部はなんだかつらそうな顔をしていた。どうやら負けているようだった。
「今後はどうするの? ずっとラスベガスにいるの?」
彼女がジュースを飲みながら訊いてきた。
「ラスベガスは明日までで、明日の夜にロサンゼルスに行くことにしてます。あいつがLAXから日本に帰るので。その後はまあ……西海岸をふらふらする予定です」
「ふらふら?」
「ええ、何も予定は決まっていないんです」
ふむ、と彼女は言ってから、ブレスレットのような細い腕時計を見た。
「そろそろ行かなくちゃいけないわ。楽しかったわ、ありがとう。いい旅になることを祈っているわ」
彼女はそう言うと立ち上がり、右手を出して握手を求めてきた。僕も立ち上がり、自分の手をズボンになすりつけて汗を拭ってから、彼女の手を握った。彼女の手は細かったが、もろい感じはしなかった。
彼女はじゃあね、と言いながら、にっこりと笑って立ち去ろうとした。
「あ、あの、名前はなんて言うのですか?」
僕は彼女に向かって少々慌てながら訊いた。
だが、彼女には僕の声が聞こえなかったのか、何も言わずに足早に去って行ってしまった。
僕は彼女が去って行った後、夢遊病者が見知らぬ場所で眼を覚まして途方にくれているようにぽかんとしてその場に立っていた。
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