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ノーベンバーレイン{立読みサイト}
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「どうでもよくはないですよ。でも、こういうのは正確には言えないんだけど、やっぱりふられたことそれ自体はショックなことではあったんですよ。けれど、次の日、ケルンに行って大聖堂を見たり、ユースホステルに泊まって、そこで知り合った人と夜飲みに行ったりしてたら、ふられたことなんて忘れちゃったんですよ。忘れんなよって思われるかもしれないけど、忘れちゃったものはしょうがないんです。だってそんなことより他にいろいろあるって知ってしまったんだから」
いろいろある、と言いながら、彼女はテーブルにひじを突いて、顎に手をあてて考えていた。
「こっちで働いているんですか?」
僕は訊いた。
「……まあ、ある意味ではね」
彼女は少し考えてから言った。「まあ、ある意味では」とは、どういう意味なのだろう、と僕は考えた。大物ギャングの愛人みたいなものなのだろうか、などとも一瞬考えてしまった。ちょっと妄想っぽいけど、この狂気の街ではありそうだったし、彼女の容姿なら、その「職業」も可能な気がしたからだった。
「常打ちギャンブラーなのよ」
彼女が言った。
「常打ち?」
「ギャンブルで生活しているってことよ。日本で言うパチプロみたいなものよ」
「常に勝つなんてことは可能なのですか?」
僕は当たり前の疑問を尋ねた。
「常に勝たなくても、どっかで勝って取り戻せばいいのよ。常に勝ち続ける必要はないし、そんなのは無理よ。そんな方法があるんなら教えて欲しいわ」
「いかさまとか?」
彼女は首を横に振った。
「二十年前とは違うのよ。今のこの近代的なシステムの中ではいかさまはできないわ」
へえ、と僕は言った。この時点では僕とは関係のない世界のことであると思った。
「あなたは学生なの?」
彼女が訊いてきた。
「いえ、今は違いますね。実家が商売をしているので、それを手伝っているだけです」
「お金を貯めては旅行しているの?」
「そんなにしょっちゅう旅行しているわけではないんです。今回は、たまたまあの友達がこっちに行くというんで同行したんです。彼はカメラマンで先月までメキシコにいて、昨日、僕と合流したんです」
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