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ノーベンバーレイン{立読みサイト}
[9]
「それがあなたのアメリカ人のイメージなのね。すごい偏見ね。でもなんで、私がバケツくらいの量のコーラを飲まなかったり、毎食後にアップルパイを食べないって知ってるの?」
「食べるんですか?」
「食べないわよ。だって甘すぎるもの。こっちのケーキって本当に殺人的に甘いのよ。コーラもあんまり飲まないわ。でも、朝はジョギングするわよ」
「胸を揺らしながらですか?」
僕は言いながらくっだらないこと訊いているなあ、と思った。しかし言ってしまったのだから仕方がない。
「そりゃ、多少は揺れるけど、シリコンを入れているわけじゃないわよ」
「ええ、知ってます。あ、いや、知らないけど、そうなんじゃないかなあ、と思っているだけで、ええと、でも、別にあなたの胸が貧弱だと言っているんじゃなくて、その、いいものをお持ちだとは思うんです。それは本物だろうとも思うし、って僕はなんで初対面の人の胸について一生懸命弁解しているんでしょう?」
僕はしどろもどろになりながら言った。彼女はまたカウンターにふせて笑っていた。グレープフルーツジュースの氷は、彼女が笑っていて全然飲まれずに溶けてしまっていた。
「弁解って、そんなのは私に訊かないでよ。あなた、おもしろい人ね」
「そうですか? あんまり人にはおもしろいって言われないですね。気難しいとはよく言われるけど」
「気難しい人なの?」
「さあ、そう言われることがあるってだけで、実際にはどうなのか僕にはわかりません」
まあ、そういうことはよくあるわね、と言いながら、彼女はテーブルと椅子が並べられた一角に目をやった。
「あっちで座って話さない?」
僕は少し迷って田部を見た。田部は相変わらずブラックジャックの席でかっかとしながら、ゲームに熱中していた。僕の中で一瞬だけ彼女に対する警戒心が芽生えたが、それはすぐに消えた。結局のところ、海外に来て心が解放されていたし、ギャンブルのできない状態ではラスベガスにいても何をしたらいいのかもわからなかった。ショーはたくさん催されているから、ギャンブルをしなくても楽しめるところはたくさんあるけれど、そんなのを一人で見たり、訪れたりするのはなんだかむなしい。
僕はうなずいた。彼女は店員に氷をジュースに入れてくれるよう頼んでいた。
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