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ノーベンバーレイン{立読みサイト}
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「ええ、今はここに住んでいるわ。二年ぐらいになるわね。その前は東京に住んでいたけど」
「東京のどこですか?」
「いろいろね。結構何度も引っ越しをしていたから」
彼女は微笑みながら言った。それから「何故、私がこっちに住んでいると思ったの?」と聞いてきた。
「何故って言われても、なんとなく、あなたの持つ雰囲気が旅行者っぽくないし、アメリカ人のような格好をしているので……」
「アメリカ人のような格好かしら?」
彼女は言いながら格好を確かめるように、カウンターの向こう側にある鏡に映った自分の姿を見ていた。
「いや、アメリカ人のような格好と言っても、それは僕が幻想として抱いているアメリカ人であって、現実とはかけ離れたものであるのかもしれません。僕は実際にはアメリカ人的なものってなんなのかはわからないんですよ。要するにハリウッド型アメリカのイメージが強いんで……。あれって幻想でしょう? でも、多くの人がUFOと言われてアダムスキー型を思い描くように、アメリカと言われると、どうしても映画の中で描かれるアメリカを思ってしまうんですよ。ええと、何を言っているんだか自分でもよくわからないけど、その、あなたの格好が変というわけではないんですよ。いや、逆にすごく似合ってます。ハリウッドの女優のようですよ。別にハリウッドの女優の友達がいるわけではないから、実際の彼女達がどういう人達なのかは知らないけど……」
僕は早口で言った。僕の慌てぶりがおかしかったのか、彼女は笑っていた。
「別に責めたわけじゃないのよ。ただ、こっちにいるのが長いから自分でも知らない間にアメリカ色になっていたのかと思っただけよ」
「アメリカ色にはなっているのかもしれません。でも、体重一〇〇キロでバケツのようなコーラのペットボトルに太いストローを差してごくごく飲んでいるわけじゃないし、どう考えても糖尿病になるための道具としか思えないくらいの殺人的な甘さのアップルパイを一日三回毎食後に食べているわけじゃないし、何キロものシリコンを胸に入れて虫みたいな体になって早朝ジョギングしているわけじゃないからいいと思いますよ」
僕はまた早口に言った。彼女はなおも笑っていた。よっぽどおもしろかったのか、カウンターにふせておなかを抱えて笑っていた。少しするとおかしさが緩んだのか、体勢を直してから言った。
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