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ノーベンバーレイン{立ち読みサイト_モバイル版}
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だが、ベルは十数回以上鳴り続けている。仕方なく僕は立ち上がり、古くさい型の黒い電話機の前まで行った。そして受話器を取った。
「遅いじゃない」
受話器の向こうで若い女の声がした。声には聞き覚えがなかった。
「どなたですか?」
僕は言った。言いながら相手の声の背後の音に耳をすました。そこにがやがやとする電話をかける人々の声が聞こえた場合、大概がなんらかの営業や勧誘なのですぐに切ることにしていたのだ。だが、女の声の背後にはなんの物音もしなかった。
「どなたって、そんなのはどうでもいいじゃない」
「そちらにはどうでもよくても僕にはよくないんですよ」
僕は暑くていらいらしていたところに頭が痛くなりそうな電話の音で少し腹を立てていた。
「そうねえ、お互いに初めてだから、少しお話しして知り合いましょう」
僕は有無を言わさず受話器を置いた。そしてまたバスタオルの上に腹這いになった。
一分ほどしてからまた電話が鳴った。電話は二十回ほど鳴ってから切れた。
僕はもうかかってくることはないだろうと思っていたが、その希望に似た期待は裏切られた。黒電話はまたけたたましく鳴り出した。三回鳴ったところで僕は受話器を持ち上げた。
「はい?」
「なんですぐに切ったのよ」
やはりさっきの女だった。
「何も買わないし、何も契約しません」
「いかがわしい営業の電話じゃないのよ。今度切ったら死んでやるから」
「あなたが死のうが生きようが僕には関係ないことです。僕にはいたずら電話に割く時間はないんです」
「いたずら電話じゃないのよ」
「じゃあ、何?」
「ええと、そうね。私は悩んでるの、ほんとよ。悩みすぎて死のうと考えたんだけど、その前に誰かに相談しようと思ったの。それで、適当に電話番号を打ってみたのよ」
僕はめんどくさいなあ、と単純に思った。
「はあ、それで何を相談するんですか?」
僕はめんどくさいなりにもとりあえず質問した。それに彼女の声には不快なところがなかったため、少し話をしてもいいかなと思い始めていた。
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