携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十七章


[Q001]


十一月の冷たい雨は、車のフロントガラスを蛇のようにうねって流れ続けていた。

僕はゆっくりと涼子が眠る葬儀場の外壁に沿って車を動かした。

一台の車が猛スピードで雨を跳ね上げながら向こうからやって来た。

その車は僕の車とすれ違うと、あっという間にどこかへと行ってしまった。

辺りはまた雨が落ちるばたばたという音だけになった。


涼子は葬儀場に設置されている冷蔵庫に入っていた。

葬儀場のスケジュールの関係で通夜が一日延びたため、一旦そこに保管されたのだ。

僕らは家に帰った。葬儀場には僕らのいられる場所はなく、時間をただ持て余すだけだったからだ。

その日、結局、母親は店を開けることにした。

何もしていないよりも仕事をして人と接触を持っていた方がよかったからだ。

僕も家に一人でいても仕方がないために母親の店を手伝った。

そして、閉店後、ただ家に帰るのもなんだったので、店の車で葬儀場まで来た。

葬儀場はひっそりとしていた。

夜も遅い時間であり、雨も激しく降り続いていたため、人影は全く見えなかった。

僕は最初、葬儀場のそばに車を停めて、その灰色の壁を見ていただけだった。

だが、車を動かし、葬儀場の入り口近くまで来た時、その扉が開いていることに気がついた。

僕は深夜遅くになったらこの門は閉まるものだと思っていた。

だが、実際には祭壇のろうそくの火や香を絶やさぬよう残っている人たちのため、門は閉まっていなかったのだ。


僕はゆっくりと葬儀場の中へと車を乗り入れた。

右に目をやると窓にいくつか明かりがついていた。

だが、人影はほとんどなかった。

僕は車を駐車場に停めると扉を開け、外に出、歩き始めた。

僕の吐く息は白かった。

雨は冷たく、僕の手は震えていた。



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