携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十六章
[P002]
十回ほどベルは鳴ったが響子は出なかった。
僕は一旦受話器を置き、それからまたコインを入れ、同じ番号を押した。
長い間ベルは鳴り続けたが、響子は出なかった。
僕は、彼女は家にいないのだろう、と思った。
僕はカジノに併設されているカフェに行き、アイスティーを注文した。
僕はアイスティーを飲みながら通りを歩く人々を見ていた。
しばらくして腕時計を見た。
午前五時になろうとしていた。
日本では夜の十時のはずだった。
僕はふとそこに得体のしれない違和感を覚えた。
この時間に家に響子がいないということは今までなかったことだった。
僕の中でその違和感は不安感へと変わっていった。
そして、悪しき妄想が僕の中で広がっていった。
それは明確な映像となって僕の中に現れた。
その映像の中で、響子は血を流し力尽きていた。
僕はそういうことが起こる可能性について考えてみた。
そして、起こっていない可能性について考えてみた。
その時僕にはどうしても起こっていない可能性が皆無であるように感じられた。
それははっきり言ってなんの根拠もないことだった。
だが、僕はいてもたってもいられなくなったのだ。
窓から見える景色は平和なアメリカの大都市の風景だったが、それは日本まで続いているものではないのだ。
僕は電話機のところへと走った。
そして、父親の家に電話をした。
すぐに瞳が出た。
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