携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十六章


[P001]


ルクソールの一室で夜中に目が覚めた。


それはラスベガスにいることができる最後の日であった。

午後にはバスに乗ってロサンゼルスの空港へと戻らなければいけなかった。

時計を見るとまだ朝の四時だった。

外は薄暗かった。

僕はもう一度寝ようと思ったが、どうにも寝付けなかった。

仕方がないので、起きて三十分ほどかけてシャワーを浴び、着替えてカジノのある階下へと下りて行った。


朝の五時近くだというのにカジノには人が割合多くいた。

結局、この街は寝ることを知らないのだ。

空は薄明るくなってきていた。

僕は電話機のところに行った。

響子に電話をかけようと思ったのだ。

僕はアメリカにいる間に何度も響子に電話をしていた。

僕は響子にこちらのゲームセンターで何人もの大きな体の男達にゲームで勝って、ワンダーボーイというあだ名をつけられたことや、ゲイ専門のモーテルに泊まってひどい目に遭いそうになったことや、大きな博物館に行って本物のマンモスの標本を見て、そのあまりの大きさにびっくりしたことなんかを話した。

彼女はそれらを本当に楽しそうに聞き、僕の健康や、身の安全を気遣い、最後には名残惜しそうな声で、また電話して、と言って電話を切っていた。

僕と響子が過ごす時間は半分が笑い声で満たされ、半分が泣き声で満たされていた。

それ以外はなかった。

コインを何枚も電話機に入れ、国際電話の番号と、日本の国番号と響子の家の番号を押した。



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