携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十四章
[N008]
「それで、どうだって?」と響子は言った。
「僕がしたいのなら、どうぞって言っていた」と僕は言った。
それから僕が考えた、僕らがとれる選択肢について話した。
だが、どんなアイデアを話しても、響子は首を縦には振らなかった。
あなたの言うことはもっともだし、それは理解できるわ、と響子は言った。
でも私には想像ができないのよ。
あなたとそうしていろいろな時間を作り上げていくことが想像できないのよ。
もう少し時間が経てば何かは変わるかもしれないけど、今は想像できないのよ……。
響子はそう言ったが、僕は響子の中に時間では解決できないものの存在を強く感じていた。
それは彼女が育ってきた特異な環境、彼女自身が持つ特殊なオーラのようなものが周りの人に影響し作り出したもの、彼女自身は意識しないにも拘わらず、彼女自身の手によって作り上げられた時間に大きく影響を受けているように感じた。
それは僕にとっても響子にとっても手強い相手であり、響子自身をして、なんで? なんで私は想像することができないの? こうして、確かに望んでいるものがあるのに、なんでそれが実ったところを想像できないの? と強く悩ますものになっていた。
僕らは最後には二人とも黙ってしまった。
それは僕がアメリカに行くほんの少し前であり、気の早い春風が気持ちいい午後のことだった。
<第十四章終わり>
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