携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十四章
[N001]
「こりゃ、すごい」
瞳が言った。
瞳はモノクロの写真を見ていた。
響子の写真だった。
響子は極端に写真を撮られることを嫌っていた。
だからその写真は僕が彼女を写すために田部から買った一眼レフで撮った貴重なものだ。
実際に響子を撮った写真は十枚にもならない。
彼女はそれくらいしか撮らせてくれなかった。
瞳は髪を少し短く切っていた。
もこもことした綺麗なオレンジ色のセーターを着ていた。
それは彼女にはよく似合っていた。
ズボンは鮮やかな緑色で、毛糸の帽子は様々な色が混ざったものだった。
なんだか、北欧の少女のような感じがした。
森の妖精の友達という感じだった。
僕はアメリカ行きの仕度をしていた。
大きな鞄に必要なものを詰め込んでいた。
「日本人には見えないね。すごい美形」と瞳は称した。
「確かにすごい美形だね」と僕は同意した。
瞳はしゃがんでコーヒーのカップを手に取った。
窓の外に見える空の色はうすのろなねずみを思い描かせた。
何となく不吉な感じを受ける曇り空だった。
「この人とまだ続いているんでしょう?」
瞳が言いながら僕に写真を渡した。
「そうだね、続いていると言えば続いている。毎日会っているわけじゃないけど」
僕は手を休めずに答えた。
「セックスしてんの?」
瞳が訊いてきた。
少ししてから、まあね、と僕は言った。
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