携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十三章
[M001]
涼子の葬式にはたくさんの人が来た。
涼子は一九九三年十一月のある朝、眠るようにして死んでいた。
僕と母親はそれには気がつかなかった。
僕はいつものように朝起きると外に出かけた。
出かける前にちらりと涼子を見た。
僕は、その時、涼子は寝ているのだと思った。
目をつぶり、上を向いて寝息を立てているような気がした。
僕は外に出かけたが、どうにも心が騒いだので少ししてから家に戻ってきた。
家に帰ると母親が涼子を抱いて出かけようとしていた。
僕はどうかしたのかと訊いた。
母親は涼子が息をしていないような気がすると言った。
僕は涼子を見た。
彼女はぐったりとしていた。
僕は急いで電話で救急車を呼んだ。
僕の家は細い路地の奥まったところにあった。
だから、僕は外に出て、救急車のサイレンの音を待った。
涼しい日で空には少ししか雲がなく、気持ちのいい風が吹いていた。
遠くの方から小さなサイレンの音が近づいてきた。
僕の目からは絶え間なく涙がこぼれていた。
僕は立っていられなかった。
僕はその場に座り込んだ。
体が震え、唇が震え、心臓がものすごく速く鼓動を打っていた。
救急車が来た。
母親が涼子を抱いて出てきた。
僕らは救急車に乗って病院へと向かった。
救急隊の人が涼子の口に器具をあて、酸素を涼子の小さな体に送っていた。
そして心臓マッサージをしていた。
僕は涼子の小さな手を握っていた。
涼子の小さな手は僕を握り返しはしなかった。
僕は自分の寿命の半分を分けてもいいから涼子を助けて欲しいと、生き返らせて欲しいと涙を流しながら祈り続けた。
病院に着いた。
すぐに涼子は医師によって診察されたが、どうやら死後十時間近く経っていたらしい。
涼子は深夜、すでに死んでいたのだ。
[→次]
[←前]
↓窪璃音のHP(PC用)
小説オンライン