携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十二章


[L006]


響子は静かに腰を下ろして僕を自分の中へと迎え入れた。

僕の頭を抱え、自分の胸に押しつけ、ゆっくりと息を吐いて僕を自分の中へと迎え入れた。

彼女の体はものすごく温かかった。

僕は今までに感じたことがないくらいに幸せだった。

左手を響子の背に回し、右手で響子の腰を抱えると彼女が動くのに合わせて力を入れたり、ゆるめたりした。

陽の光はすでに遠い日の思い出のように弱いものになっていた。

部屋の中は暗く、静かだった。

僕はその暗い部屋の中で響子の顔を見ていた。

響子の額はうっすらと汗をかいていた。

響子はうつむき気味に、浅く速い息をして、両手を僕の腰に回して体をゆっくりと動かしていた。

響子は僕に見られていることに気がついたようだった。

一瞬目を上げて僕を見ると、両手で僕の頬を掴み唇をあててきた。

熱い息が僕の中に入ってきた。

それから熱い響子の舌が入ってきた。




僕がまだ全てのことが上手くいくと思っていた頃のことだ。

涼子は普通の人よりも寿命が長いのではないのだろうかと思っていた頃のことだ。


だが、実際にはその半年後に涼子は亡くなり、この世はどうにも上手くいかないことというものがたくさんあると、僕は身をもって知ることになるのだ。

<第十二章終わり>


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