携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十一章
[K009]
そうしてひどく時間がかかったけれど、何とか家までたどり着けた。
家には母親はいなかった。
まだ、店からは帰っていないようだった。
涼子の部屋に行くと彼女もいなかった。
涼子は母親に店に連れて行かれているようだった。
僕はコートを脱ぐと、そのまま自分のベッドの中に入った。
家の中は暗く、ひっそりとしていた。
僕はひどく疲れていた。
ベッドで丸くなっていると、どうしようもないくらいに涙が溢れてきた。
涙はとめどなく流れ、僕は小さく唸り声をあげた。
体は震えてしまい、それを止めることはできなかった。
僕はそうして長いこと涙を流し続けてしまった。
それは一九九二年の十二月のことで、涼子が死ぬ一年前であり、瞳と出会う夏の二年前のことだった。
<第十一章終わり>
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