携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十一章


[K002]


僕らはしばらく大通りを歩いた。

街には多くの恋人が腕を組み、身を寄せ合って歩いていた。

僕は響子に触れたくて仕方がなかったけど、彼女にはなんだか透明で特殊な殻のようなものが感じられて、結局、僕は彼女にあまり近づけなかった。



「兄弟はいるの?」

響子が訊いてきた。

僕らは大通りから少し入ったところにあるステーキハウスにいた。

響子が、何が食べたいか訊いてきたので、僕は肉と応えたのだ。

僕は厚切りのステーキをもりもりと食べていた。

どういうわけか食欲だけはいつでもきちんと僕の中にあった。

まだ十代だったから、体が栄養を必要としていて何かしらかの命令を出し続けていたのかもしれない。

響子は赤ワインを飲んで、ソーセージの盛り合わせを適当な大きさに切って、時々思い出したようにしてそれを食べていた。

妹がいる、と僕が答えると、響子は意外そうな顔をした。

「どんな妹さんなの?」と響子は訊いてきた。

「六歳違いで、病気なんだ」と僕は言った。

響子は訊いてはいけないことを訊いたのかと思ったようだった。

それ以上、何を訊けばいいのかわからなかったらしい。

「コルネリア・デ・ランゲ症候群っていう病気なんだ。聞いたことないでしょう?」

僕は言った。

響子はうなずいた。



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