携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第十一章


[K001]


次に響子に会ったのは一週間後だった。

僕は母親の店で少しだけ働いた後、ギャラリーに行くと響子に食事をしないか訊いた。

響子はその時は用事があるのでだめだが、明日は仕事が休みなので明日の夕方に会おうと言った。

僕はわかった、と言うと、その日は家に帰った。

僕が電車に乗っている間に考えていたことは、彼女の用事とは何だろう? ということだけだった。

当然、彼女にもそれなりにいろいろと用事というものがあるのは当たり前なのだが、僕にはそれらがひどく気になってしようがなかった。

そして、次の日の夕方までの時間を悶々と過ごした。




約束の時間に約束の場所へと向かい歩いていた。

響子は大きな木にもたれかかるようにして立っていた。

顔を下に向け、ゆっくりと白い息を吐いていた。

街はすでにクリスマス商戦の時期に入っており、商店のウィンドウはきらきらとした飾りで彩られていた。

響子は水色のもこもことした丸い帽子を被り、丈の長いカーキ色の厚手のコートを着ていた。

なんだかロシアかどこかの寒い国のお菓子のような印象を受けた。

僕は足を止めて響子を見ていた。

響子は僕に気がついていないようだった。

相変わらず下を向いて、時折鼻をすすって、白い息を吐いていた。

ゆっくりとまばたきをしている彼女は、すぐに消えていなくなってしまいそうだった。

僕はコートの襟を正してまた歩き始めた。

響子に五メートルくらいのところまで近づくと、彼女は顔を上げて僕を見た。

笑顔で僕に挨拶してきた。

少し前の苦しげな表情で下を向いて息を吐く姿の彼女からは全く想像できない明るい笑顔だった。

僕もそれに笑顔で応えた。



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