携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第九章
[I002]
たまに田部や渡海が電話をかけてきた。
気が向いた時は彼らの誘いにのって出かけることもあったが、そんな時でも僕の頭の中は響子のことだけだった。
シンセサイザーをいじって音を作り、友達が毎月催している大きなクラヴでのパーティーにも参加していたが、はっきり言って気合いが入っていなかったから客の評判は悪かった。
渡海はそんな僕の様子に呆れからかってきた。
「どんな女の人なの?」
美里さんが訊いてきた。
その日のパーティーは盛況で、相変わらず人種のよくわからない人達がわんさか来ていた。
僕らは背もたれの大きなソファーが適当に並べられたラウンジにいた。
ラウンジには奇妙な環境音楽が流れていた。
「降りしきる雪の中を傘なしで静かに歩くような人です」
僕は言った。
「何だよ、それ?」と渡海が言った。
「鉄工所勤めに誇りを持っているような女の人ではないってことだよ」
僕は渡海の方を向いて言った。
ますます意味がわからん、と渡海が言った。
「あら、私はわかるわよ。北の方の人なんでしょ?」
違います、多分、と僕は首を振った。
渡海も美里さんもよくわからない、と言った。
僕は彼女について上手く説明できなさそうだったので、それ以上はその話題について話さなかった。
クラヴの中は人々の熱気で蒸し暑かった。
僕は外を見た。
外は氷になりかけた雨がぼたぼたと降っていた。
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