携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第八章
[H008]
*
何故か汚れてしまう時がある。
いろいろな意味で。
全く予想もしなかったことで、だ。
もちろん望んだわけじゃない。
でも汚れてしまうのだ。
雨降りの後の泥道を駆けて泥を跳ね上げたり、他の人が跳ね上げた泥が服についたりして汚れてしまうのだ。
それは自分の視界には入らないところで起きることかもしれない。
だから、他人から、ねえ、汚れてますよって後ろから声をかけられて初めて気づくことが多い。
そうして人に言われても、そんなことはありませんよって言ってしまう時もある。
恥ずかしかったり、なんだか腹が立ったりするからだ。
そんな時は信じるしかない。
何をって訊かれても、僕にはこれって目の前に出すことはできない。
シルクハットの中から煙とともに引き上げることもできない。
でも、とにかく信じるんだ。
そうだ、そしてぶつぶつとつぶやいてみる。
ここに確かに、本当に現実として信じられるモノがあるはずだって……。
*
<第八章終わり>
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