携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第八章
[H002]
「で、新しい家族関係はどうだい?」
僕はカルビを食べながら瞳に聞いた。
瞳は溶き卵の入った野菜スープを飲んでいた。
田部が何も言わずに僕らの前に辛みそをからめたギアラの皿を置いていった。
「田部さんってしゃべらない人なのね」
瞳が言った。
「そんなことはないよ。今はバイトの最中だから話し掛けてこないだけだ。もしくはからかっていてわざと話してこないんだよ」
僕は言った。
僕らは田部がアルバイトをしている焼肉屋で少し早めの夕飯を食べていた。
夕方、瞳が電話で夕飯はどうするのか、と訊いてきて、僕は肉が食べたいと言った。
「あれでからかっているの?」
瞳が訊いてきた。
「そうだよ。すました顔で料理を運んできて裏で他のスタッフと笑っているのさ」
「なんで笑われなきゃいけないの?」
さあ、と僕は言った。
確かに笑われる理由はよくわからない。
でも多分僕が兄貴面して瞳と焼肉をつついている様が、彼には奇妙で面白く見えるのだろう。
その感覚は何となくわかる。
「家族関係は良好なの?」と僕は再度訊いた。
「最悪よ」
瞳は言った。
「それはすまないね」
言ってから僕は酎ハイのレモン割りを飲んだ。
別に僕が謝ることではないけど、自分の肉親が関係していることなので何となくそう言った。
「嘘よ。関係は極めて良好って感じよ」
瞳はそう言うと、焼けたカルビを自分と僕の皿に置いた。
「問題はないんだ」
僕はそのカルビを食べながら訊いた。
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