携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第七章
[G002]
トイレからダンスフロアに戻り、周りを見渡した。
そこには瞳の姿はなかった。
カウンターにいる渡海のところに行った。
彼は店員に飲み物を注文していた。
「瞳が見あたらないんだが……」
僕は渡海に言った。
渡海は顔を上げ、首を動かし、瞳の姿を探した。
でも〈R〉はそんなに大きなクラヴではない。
すぐに瞳がここにはいないことはわかる。
瞳がクラヴに連れて行けと言ってきたので、僕は渡海を誘い、六本木にある〈R〉へとやって来た。
〈R〉は小さなクラヴで、オーナーも外国人であったため、瞳でも入ることができた。
「さっきまではそこにいたんだが……」
僕は渡海をカウンターに残したまま、エレベーターのそばにある小部屋に向かった。
小部屋は二坪程の大きさで、大小のクッションが置かれ、踊り疲れた客がくつろげるようになっていた。
僕は小部屋とフロアーを仕切る曼陀羅模様が描かれた布をまくり上げ、中を見た。
中には六人ほどの男女がいた。
瞳もそこにいた。
瞳は男の一人から何かを受け取り、それを口につけようとしていた。
僕は手前に寝そべる男をまたいで中に入り、瞳が口につけようとしていたものを取り上げると、それを男に返した。
それから、瞳の右手を握り引き上げると、また入り口で寝そべる男をまたいで小部屋の外に出た。
そこには渡海がいた。
渡海は小部屋を覗いた。
「マリオか」
渡海が言った。
ああ、と僕は答えた。
「なんなの?」と瞳が言った。
「あいつはマリオっていってプッシャー、まあ、簡単に言ったらヤクの売人なんだよ」
渡海が瞳に言った。
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