携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第七章
[G001]
*
「僕は時々、ダマヤンティとイギーの関係について考えるんですよ」
僕は向かいに座る美里さんに言った。
渡海はトイレに行っていた。
「つまり、ええと……イギーが死んだ朝に、ダミーは玄関先にやってきて、ニャーと一鳴きしたんです。
僕は玄関の扉を開けてダミーを中に入れました。
ダミーは中に入ると横たわるイギーのところに行って、用心深く彼の周りを回りました。
それから、ちょっとだけイギーの匂いを嗅いでから玄関先へと戻っていったんですよ。
そして、また一鳴きしてから去っていきました」
微妙な関係ね、と美里さんが言った。
そうですね、と僕は答えた。
ダマヤンティはその後も近所の野良猫の女王として君臨した。
彼女の最期がどんなものだったのかはわからない。
僕は父親の家へと向かう途中、ダミーの縄張りでよく彼女を見かけた。
ある日、ダミーはお気に入りの、玉座のようになっているブロック塀の塊の上に寝ていた。
彼女の脇には小さい猫が何匹か寄り添うようにしていた。
僕はダミーと五メートルほど離れたところで自転車を止め、彼女を見た。
ダミーは数秒間、僕と目を合わせてから、そばにいた彼女の子と思われる小さな猫の背中をなめた。
それからまた僕を見た。
そして、大きなあくびをした。
僕は自転車を走らせた。
少し行ってから振り返ると、ブロック塀の上にはもうダミーはいなかった。
彼女達はどこかへ散歩でもしに行ったらしかった。
それが、ダマヤンティを見た最後だった。
*
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