携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第六章
[F001]
その時、僕は銀座通りから少し入ったところにある路地を歩いていた。
路地は細く、薄暗いものだった。
少し背の高いビルが空から上手いこと空き地を目指して差し込まれたようにして建っていた。
その細いビルの間に古い家屋が窮屈そうに建っていた。
その路地からさらに横へと延びる細い路地裏には、明かりがついた大小の看板が道に並んでいた。
もうすぐ陽は落ち、辺りは暗くなり、ネオンが輝き始める。
僕は十八歳で大小の不満を体の内に抱え込んで、それを解消する術を知らないままに日々を送っていた。
世間、時代が徐々に暗闇へと向かっていた時で、安直な成功や言い訳のつけが回り始めていたが、僕自身には特に具体的には影響は出ていないように思えていた。
僕にとっての問題は……何故わからないんだ! そんなのはちょっと考えればいいだけのことだろう! そんなことに気がつかないなんてわざとじゃないのか! っていうようなことが僕自身に与えるストレスが、周りの人に伝わらないことでさらにいらだちをつのらせてしまうことだった。
だが……まあ、それはどうでもいい。
ここでは響子のことを話さなければいけない。
彼女、響子はギャラリーの受付をしていた。
そのギャラリーとは、僕が刺さっていると表現したビルの一階にあった。
そのビルは奥に細長くなっており、入り口は本当に狭いものだった。
僕はそんなところにギャラリーがあるなんて知らなかった。
それまでも何回かこの路地は通ったのだが気がつかなかった。
でも、その日はうす暗く、ギャラリーの看板が妙に明るく目立っていた。
どちらかと言えば古風な芸術作品よりも現代アートといっていいものを多く展示しているギャラリーだった。
その時も鉄製の奇妙なオブジェの展覧会をしていた。
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