携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第五章
[E005]
彼女はかなりの重度のコルネリア・デ・ランゲ症候群だった。
だから、たとえ年をとっても普通の人として生活することは全くできない。
体は成長しないし、脳の発育もほとんどない。
本当に普通の人の十分の一くらいしか発育しないのだ。
悲劇的といえば言えるだろう。
でもそこは考えようで、体は小さいままだし、それでいて結構丈夫だ。
だから、僕ら介護する側は楽なのだ。
旅行にも簡単に行けるし、食事を与えるのもおむつを取り替えるのも簡単にすますことができる。
介護することに疲労困憊するなんてことはあんまりなかった。
だからといって問題が全くないわけではないのだが、そんなものは少しがんばれば何とかなったもんだ。
それに涼子は見栄えがよかった。
三歳くらいになってくるとようやく大福みたいなまん丸の顔から少しずつ人間の顔になってきた。
顔が整い始めてくると、僕は彼女がかわいい顔をしていることに気がついた。
自分で座って鏡を見て髪をとかすなんてことはできなかったが、彼女はさらさらとした綺麗なストレートの髪の毛を持っていて、それを母親が丁寧にとかしてあげていた。
コルネリア・デ・ランゲ症候群の人は毛深くなる傾向があり、涼子も放っておくと眉毛がつながってしまうし、背中にもうっすらと毛が生えている。
背中は剃刀をしょっちゅうあてるには肌が弱すぎたので放っておいたのだが、眉毛の方は見えるところだし、いつもきれいに整えていた。
耳を掃除される時はすごく暴れるのに、眉を整えられる時はじっとしていた。
何か冷たい物が顔にあてられているのに緊張していただけなのかもしれないが、女の子であるため、本能的に見た目を整えられるのには我慢できたのかもしれない。
涼子は眉を整えられて、綺麗な服を着せられるとよくできた人形のような美しさをもった少女になった。
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