携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第四章


[D006]


瞳はなんだか少し怒っているようだった。

僕は彼女のステーキがのった皿に手を伸ばし、それを取った。

瞳は驚いて僕を見た。

僕はその皿を自分の前に持ってくると、ナイフとフォークで食べやすいように切ってから、瞳の前に戻した。

瞳は、どうも、とだけ言うと、一口大に切られたステーキを食べていた。

それからまた父親と泉さんの取り留めのない話が続いた。

僕にとってはどうでもいいような情報が勝手に入力されていく感じがした。

僕は瞳と話したかったのだが、彼女はずっと自分の前にある皿の上しか見ていなくて、なんとなく話しづらかった。

結局僕は彼女に話しかけられなかった。

瞳は出てくる料理を全てたいらげていった。

デザートは三種類の中から選べたのだが、彼女は三種類全て持ってきてもらってたいらげた。

この細い体のどこにそんなに入るのだろう、と僕は彼女がぱくぱくとデザートを食べていく様を見て思った。

瞳は僕の視線に気がついたのか、一瞬上目がちに僕を見て、テーブルの下、軽く僕の右足を蹴った。



「パーマも似合うじゃない」

僕は店の外に出て瞳に言った。

泉さんはトイレに行き、父親は店内で勘定をしながら店主と話をしていた。

瞳は首を横に振った。



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