携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第三章
[C004]
渡海は僕と同じ年で、僕がよく行く服屋の常連だった。
その服屋は変わっていて、中にベンチがあり、常連客がくつろぐことができた。
僕らはそこで出会った。
話も合ったし、いろいろなことの趣味も似ていたので、その服屋以外でもよく会った。
渡海は高校を出た後、特に何をするというわけでもなく、適当に働いて遊び暮らすという生活を続けていた。
最近は知り合いの彫り師のところに出入りしていて、そっちの世界の修業のようなことをしていた。
実際、渡海の体にはいくつか刺青が入っていた。
渡海は痩せて背の高い男だった。
美里さんは渡海の五つ上の彼女で、野性的な感じがする渡海とは違い、清楚なお嬢様という感じの女性だった。
何故この二人が上手いことやっていけているのかは数多あるこの世の謎の一つだった。
「いや、それが驚いたことに一週間後に父親の家に行ったらしっかりと眼が開いているダマヤンティが這い回っていて、イギーが嫌そうな顔で部屋の端でそれを見てたんだ」
僕はアイスコーヒーを一口飲むと言った。
はははははと美里さんが笑った。
渡海もにやにやしていた。
美里さんの笑いは快活で気持ちのいい笑いだった。
「じゃあ、結局、ダマヤンティは眼をつぶされたわけじゃないんだ」
美里さんが言った。
「そうですね」と僕は答えた。
「結局、僕の勘違いだったんですよ。生まれて間もなかったから、ただ眼が開いてなかっただけでした」
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