携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第三章
[C003]
よく僕は彼の口の中に拳を入れて遊んだ。
拳を入れるとイギーは困った顔をしてはぐはぐとそれを噛んだ。
パグは元々情けない顔をしているのだが、イギーの困った顔はまた格別で、僕はそれを楽しんだ。
イギーは僕のこの遊びに確かに困った顔をしているのだが、実際には嫌がっているようには思えなかった。
彼は彼なりにかまわれていてうれしいように僕には思えた。
イギーは優しい犬だったので、猫とも同居できるような気がした。
しかも僕はその時、ダマヤンティは眼が見えない猫だと思っていたので、ダマヤンティ的にもイギーのことは問題ないと思った。
僕はミルクを飲み終えたダマヤンティを抱えておなかを撫でた。
ダマヤンティは気持ちよさそうに体を伸ばしていた。
その後は少し記憶が曖昧なのだが、僕はどうやら用事を思い出して、すぐに父親の家を出たらしい。
ダマヤンティを病院に連れていったのかどうかは覚えていない……。
「それで、どうなったの? やっぱり眼は見えないままだったの?」
美里さんが訊いてきた。
僕らはやわらかい春の太陽が降り注ぐオープンテラスのカフェにいた。
渡海はアイスティーを飲んでいた。
美里さんは苺ソースがかかったソフトクリームを食べていた。
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