携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第三章
[C002]
僕は突然、目の前に現れた子猫に驚き、駆け寄るとひざまずいた。
子猫はネズミのように小さく、眼が開いていなかった。
そして、一匹は両眼から血を流していた。
瞬間的に僕は誰かがいたずらで子猫の眼を傷付けたのだと思った。
僕は混乱し、どうすればいいのかよくわからなかったので、血の出ていない方の子猫を拾い上げた。
その子猫は眼が開かない他は特に外傷はなかった。
僕は子猫を抱えたまま走って父親の家へと向かった。
玄関のベルを押すと父親が出てきた。
僕は彼に、そこで拾ったと言って抱えて来た子猫を渡した。
それからもう一匹の子猫も連れて来ようと思い、走って路地裏へと戻った。
でも、もうそこにはあの眼から血を流していた方の子猫はいなかった。
僕は辺りを素早く探した。
でも見つからなかった。
結局、ダマヤンティの兄弟もしくは姉妹がどこにいったのかはわからずじまいだった。
多分誰かが拾っていったのだと思うが、もしかしたら不幸な目に遭ってしまったのかもしれない。
僕としては心優しい人に拾われたことを祈るだけだった。
運よく、と言っていいのかどうかはわからないが、僕の拾ってきた方の子猫は怪我をしている様子はなかった。
ミルクを湿らせたタオルを口に含ませてやると、ちゅうちゅうとおいしそうに吸った。
その時、父親の家には犬がいた。
オスのパグで、名前はイギーと言った。
イギーはおとなしい犬で、何をされても吠えたり噛んだりはしなかった。
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