携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第二章
[B008]
夏休み中とはいえ、平日の蒸し暑い午後の銀座にはほとんど若い人はいなかった。
いるとすれば、買い物客が連れている幼児くらいなもので、あと若い人といえば、暑苦しいジャケットを着た、いかにも悪いことをして金を稼ぎましたって顔をしている小太りの男が連れている化粧の濃い水商売の女ぐらいしかいなかった。
それ以外はみんな人生に一区切りついて、後はまあのんびりやりますよって感じの、年を経たいい感じの人達が歩いているだけだった。
「どうも」
ぼおっとして壁によりかかり通りの向こうを見ていると、ふいに声をかけられた。
僕は声をかけてきた相手を見た。
ものすごく細い女の子だった。
ぱっと見の年齢は十四か十五歳くらいに見えた。
サングラスをかけてシャギーのはいった長い黒髪を風に揺らせていた。
小さなTシャツを着て、白いデニムのショートパンツをはき、そこからすぐに折れてしまいそうな細い足がまっすぐにのびていた。
僕はその足をたどりながら、彼女の足下を見た。
彼女は派手な色のナイキのスニーカーを履いていた。
それから戻るように彼女の顔を見た。
といっても彼女がしているサングラスはとても黒く、彼女の目の動きは確認できなかった。
「いやらしいわよ。じろじろ見て」と彼女は言った。
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