携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第二章
[B007]
一時間後?
電話が静かになってしまうと、また元の夏がやってきた。
まるで、そんな変な女からの電話なんかかかってこなかったかのように、元の夏が戻ってきた。
僕はバスタオルの上に腹這いになった。
そして、また電話が鳴らないかな、と思った。
だが、電話は十分ほど経っても静かなままだった。
僕は起き上がり、ちっと舌打ちをしてベランダに干してあったタオルの一つを取るとバスルームへ行き、シャワーを浴びた。
シャワーの水は最初はぬるく、次第に冷たくなっていった。
バスルームから出ると体を拭き、髭を剃った。
それから服を着て、髪型を簡単に直した。
家を出て、駅までの道を歩いた。
遠くの方に陽炎が立っていた。
なんだか自分が鉄板の上のお好み焼きだかもんじゃ焼きだかになった気分だった。
駅で切符を買っている時に、そう言えば相手の容姿を聞いていなかったな、とふと思った。
電話が切れてから一時間後。
僕は電話の相手が指定した店の前にいた。
太陽はじりじりとなんだか親の恨みでもはらすような感じで街を熱し続けていた。
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