携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第一章
[A018]
「でも、別にたいしたことではないですよ。
エベレストに登りに行ったわけじゃないし、地雷が埋まっている平原を歩いたわけでもないですから」
「でも、行って初日にふられたってのはすごいわね。
行く前にそうなるってことわからなかったの?」
「わかってましたよ。だけど海外に行ってみたかったんですよ。
大体ふられた理由は彼女に会いたいというよりも、そこに行ってみたいと思っている僕に問題があったからとも言えるのだから」
「なんだ。じゃあ、彼女はどうでもよかったの?」
「どうでもよくはないですよ。
でも、こういうのは正確には言えないんだけど、やっぱりふられたことそれ自体はショックなことではあったんですよ。
けれど、次の日、ケルンに行って大聖堂を見たり、ユースホステルに泊まって、そこで知り合った人と夜飲みに行ったりしてたら、ふられたことなんて忘れちゃったんですよ。
忘れんなよって思われるかもしれないけど、忘れちゃったものはしょうがないんです。
だってそんなことより他にいろいろあるって知ってしまったんだから」
いろいろある、と言いながら、彼女はテーブルにひじを突いて、顎に手をあてて考えていた。
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