携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第一章


[A017]


僕らはエジプト風に過剰に装飾された椅子に腰掛けた。

テーブルにもそれらしい模様が描かれている。

こういうところはどこまでも徹底しているのだ。

この街ではそういうことを徹底して行わなければ、生きていけないのだ。

「海外は初めてなの?」
彼女が訊いてきた。

いいえ、と僕は首を横に振った。

「前にドイツに行ったことがあります。十六歳の頃に」

「遊びに?」

「いいえ。その時つきあっていた子が家の関係でドイツに引っ越したんで、冬休みに会いに行ったんですよ」

「じゃあ、一人で行ったの?」

「そうですね、結果としては」

「結構若くして旅をしたのね」

「まあ、そう言えると思いますよ。
だって、あっちに行ったのに初日にふられて、仕方がなく一人でドイツをぐるぐる巡って、たくさんの人と出会ったけど、僕より年下の日本人とは会わなかったから。
大学生はたくさんいたけど」

「そうでしょう」

彼女はジュースをストローでぐるぐるかき回しながら言った。



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