携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第一章
[A015]
「それがあなたのアメリカ人のイメージなのね。
すごい偏見ね。
でもなんで、私がバケツくらいの量のコーラを飲まなかったり、毎食後にアップルパイを食べないって知ってるの?」
「食べるんですか?」
「食べないわよ。
だって甘すぎるもの。
こっちのケーキって本当に殺人的に甘いのよ。
コーラもあんまり飲まないわ。
でも、朝はジョギングするわよ」
「胸を揺らしながらですか?」
僕は言いながらくっだらないこと訊いているなあ、と思った。
しかし言ってしまったのだから仕方がない。
「そりゃ、多少は揺れるけど、シリコンを入れているわけじゃないわよ」
「ええ、知ってます。
あ、いや、知らないけど、そうなんじゃないかなあ、と思っているだけで、ええと、でも、別にあなたの胸が貧弱だと言っているんじゃなくて、その、いいものをお持ちだとは思うんです。
それは本物だろうとも思うし、って僕はなんで初対面の人の胸について一生懸命弁解しているんでしょう?」
僕はしどろもどろになりながら言った。
彼女はまたカウンターにふせて笑っていた。
グレープフルーツジュースの氷は、彼女が笑っていて全然飲まれずに溶けてしまっていた。
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