携帯恋愛小説
『ノーベンバーレイン』
窪璃音/著
第一章


[A007]


「日本から来たの?」


三週間前、彼女は僕に声をかけてきた。

僕はルクソール内にある派手なエジプト風カウンターでコーラを飲んでいるところだった。

僕はグラス片手にカウンターに寄りかかって、二月の太陽の光を全身に浴びる巨大な娯楽街を見ていた。

一九九五年のラスベガスは、ファミリー層をも顧客として取り込もうと、狂気じみた建物をわんさかと建てているところだった。

一昔前のギャンブルというダークなイメージは全くなく、街全体を遊園地のような華やかさで飾り立てていた。

巨大な資本が投入され、様々なアイデアが討論され、きっちりしたシステムの基に企画が形をなしていった結果、ラスベガスは地球上の他のどんな場所とも違う希有な街になっていた。



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