恋愛小説『ノーベンバーレイン
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立読みBESTランキングで四ヶ月間1位になった作品。
自費出版でありながら、その内容の濃さと深さに多く
の読者を得ている新しい恋愛小説です。

〈アヒル仮面〉

 アヒル仮面はプロレスラーだ。
 名前のとおりアヒルの仮面をつけている。そして、かわいいアヒルの仮面をつけているくらいだから、あまり強くないレスラーだった。
 ある夜、アヒル仮面は近所の公園に行った。仮面はつけていなかった。
 その公園には大きな池があった。
 そして、そこにはアヒルがいた。そのアヒルはこの間まではいなかったものだ。最近になってどこからかやってきたのだ。
 アヒル仮面はベンチに座り、薄暗い光の中で池を気持ちよさそうに泳ぐアヒルを見ていた。
 アヒル仮面は強くなりたかった。
 でもアヒル仮面は何の為にがんばればいいのかわからなかった。
 アヒル仮面はしばらく池の上を滑るように泳ぐアヒルを見ていた。アヒルは時々水中に顔をつけて、ぱしゃぱしゃと波を立てていた。
 池の水面にうつる月が揺れた。アヒルは綺麗な羽を持っていた。アヒルはその羽を時折伸ばして毛繕いをしていた。
 その姿は華麗で優雅で女神の水浴を思わせた。
 そしてアヒル仮面はそのアヒルに恋をした。
 アヒル仮面は大急ぎで家に帰るとアヒルの仮面をかぶりまた池へと戻ってきた。
 そしてアヒル仮面はその綺麗なアヒルにプロポーズをした。
 アヒルはアヒル仮面のプロポーズを受けた。二人は満月の下で愛し合った。
 それからのアヒル仮面は強かった。
 守るべき家族ができたアヒル仮面は強かった。
 トーナメントを勝ち続けた。
 そしてとうとうチャンピオンへ挑戦する時がきた。
 さすがにチャンピオンは強かった。一進一退の死闘が続いたが、最後にはアヒル仮面が勝利した。
 アヒル仮面はチャンピオンベルトを腰に巻いて両手を上に上げて涙を流した。
 その日の夜、アヒル仮面は仲間とともに祝賀会に出かけた。

 ところでアヒル仮面と結婚したアヒルなのだが、彼女はアヒル養殖所から脱走したアヒルだった。
 アヒル養殖所は食用アヒルの養殖をしているところだ。
 そして、アヒル養殖所は脱走アヒルの捜索に余念がなかった。
 かくして綺麗なアヒルはアヒル養殖所の追跡係に見つかり連れ去られてしまった。

 アヒル仮面は高級中華レストランで仲間とともに食事していた。
 アヒル仮面は早く家に帰って愛妻であるアヒルに自分がチャンピオンになったことを伝えたかった。
 でも団体の社長や兄弟子の手前帰ることはできなかった。それにこの祝賀会は自分がチャンピオンになったことを祝う集まりなのだ。
 勝手に一人で帰ることは出来ない。
 だから仕方なくでてくる料理を食べていた。
 ビールを飲みながらぱくぱくと食べていた。
 料理はあとからあとから出てきた。
 アヒル仮面はまさかそれが愛妻であるアヒルを使った料理であるとも知らずにぱくぱくと食べていた。
 この料理おいしいなあと思いながらぱくぱくぱくと食べていた。

 悲劇ってこういうことだと思わない?


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小説「ノーベンバーレイン」

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